エレクトロニクス産業は流動的です。不況のために経済成長は停滞し、製品寿命は短くなり続け、企業は労働者を一時解雇しています。企業のグローバル化と技術開発によって市場がダイナミックスに変化している今こそ、企業が事業を見直し、徹底的な改革を行う機会です。
管理理論においては、徹底的な改革は企業の基本的な信念と操作の変更として定義されます。通常、この改革は、次の理由の1つで起こります。法的、政治的、経済的、技術的な条件による競争原理の変化 製品寿命の変化 企業内の変化 (詳細については、『Managing the unsteady pace of organizational evolution』(M. Tushman、W. Newman、E. Romanelli)を参照してください。)
刺激として、または行動として、これらのいずれかを有効にするためには、以上の理由が、組織およびその会社のエレクトロニクスエンジニアに共感を持たれる必要があります。
エレクトロニクス設計の世界では、「競争のための基盤」のシフトがすでに起きています。新興諸国が活力をもってエレクトロニクス産業に参入を開始しています。この迅速に変化するグローバルな市場は、現在の不況によって悪化していますが、これらの変化は不況の前にすでに起きていました。これは組織が受けるプレッシャーを大きくしています。衰退しつつある製造業と高いスキルを必要としない仕事は、従来から外国に移転されていますが、先端技術はそうではありません。しかし、現実問題として、過去においてエレクトロニクス設計者が担当別に配置されていましたがもはやそうではありません。
組織が基本価値を再定義し、考慮すべき戦略を組み立て直し、さらには経済的、政治的状況をも利用することが重要です。意思決定者はこれを頭に入れて自問自答する必要があります。業界大手としての自社の位置を守るのは何か? 答えが「価格」または「市場一番乗り」である場合は、その企業はその市場と付き合う方法を考え直す可能性があります。このような戦略は持続できませんし、他の場所であまりに容易に適用できます。
こういったことを頭に入れ、組織は競争の基盤のシフトをどのように有利に開始するでしょうか? 何が役に立つでしょうか?
組織およびエレクトロニクスエンジニアは、創造性や改革のような現実的で持続可能な差別化要因に力を集中させる必要があります。スキルは外国に移転できますが、アイデアは移転できないからです。意思決定者は、ある製品から他の製品を差別化するアイデアを実現することが必要であると覚えておく必要があります。
エレクトロニクス産業で興味深い動きがあります。製品寿命はファッションシーズンより長く続くのが難しい現状です。別に目新しいことではないでしょうが、現在の経済情勢は企業としての能力を鍛え抜いています。景気悪化にも関わらずお客様が購入する製品を、企業は発見しようとしているからです。このために興味深い問題がエレクトロニクス産業に突き付けられています。消費者は変化にエネルギーを与えるものです。ですから、お客様の視点が設計概念、設計過程、設計のアプローチと環境の中心にある必要があります。
これで何がまずいのしょうか? 最大の間違いは、既存のパラダイムの中で考えるという罠に陥ることです。Henry Fordは「何が必要かを人々に尋ねたら、”もっと早い動きを”と言っていただろう」と述べていましたが、彼はこれを視野に入れていたのです。エレクトロニクス設計者の真の仕事は、人々が求めており、他のどこからも提供され得ない新しい何ものを創造することです。iPhoneは典型的な例です。iPhoneは小型でも高速でもありません。既存のアイデアの集合を消費者が体験する方法に新しく変えただけです(そしてこれは再び変更されたばかりです)。
では、企業とエレクトロニクス設計者は、製品開発をどのように変革し、どのように自力で開拓するのでしょうか?
企業とエレクトロニクス設計者は、ルールブックを捨て、消費者が製品とどのように付き合うかに関心を集中させる必要があります。そのためには経験に基づいた協力的な設計プロセスが必要です。エレクトロニクス設計では、これまできわめて秩序だった連続的なプロセスに関心を集中させてきました。その場合、各設計者には特定の仕事に関する仕様と制約のリストが与えられます。設計者はそれぞれの仕事を完成してから、(融通の効かない壁を越えることしばしばですが)その仕事を次の仕事のエンジニアに渡して次の仕事を完成してもらいます。しかし、これではあまりにもお役所仕事です。このアプローチでは、チーム間の連携と創造性を制限してしまいます。特定分野で何か新しいことを試みると、プロジェクトを行き詰らせ、同僚を激怒させるという危険を冒すことになります。これは流動的な市場を完全に無視した柔軟性のないプロセスです。
アイデアを模索し経験する自由がないと、古くて制限のある思考パターンにあまりに簡単に陥ってしまいます。革新を産み出すためには、ツール、チームの構成、柔軟に伝達ができる作業プロセスの支援を備えた開放的な文化が必要です。結局、製品とユーザの経験を最終的に分離させるのは設計の革新だからです。
しかし、急激な変革を行うのは困難なことがあります。通常、仕事の文化と手続きは、従業員の精神に深く染み付いています。変革を実現するためには、思考の総点検が必要です。これを行うために、エレクトロニクス設計者は古いパターンを「捨て去り」、新しい方法に適応する必要があります。また、成功を収めるためには、継続的な教育と最新のツールも必要です。これは最初は困難かも知れませんが、必要な変化です。エレクトロニクス設計産業に深く染み込んだ慣性は変化させる必要があります。何故なら、変化を行わないと、企業は置き去りにされる危険に晒されます(この記事で Henry Fordを引用しましたが、エレクトロニクス設計の世界でも、誰もGMにはなりたがりません)。
つまり、製品の差別化とビジネス戦略を考えるとき、組織は現在のプロセスを越えて思考し、急進的な思考を開始する必要があります。急速に変化しつつある世界市場では、今日のモデルもすぐに旧式になってしまうからです。