マルチチャンネル デザインの作成

このチュートリアルでは、回路図エディタでシートシンボルとRepeatキーワードを使用してマルチチャンネルデザインを作成する方法を説明します。また、ルームとデジグネータの形式についても併せて紹介します。

Tutorial TU0112 (v1.6) April 20, 2008

マルチチャンネルデザインとは同じチャンネルを繰り返し使用しているものを指します。チャンネルは独立した回路図のサブシートとして一度だけ作成すればよく、そしてプロジェクトに含まれている必要があります。繰り返し使用するチャンネル分、同じシートシンボルを複数配置するか、シートシンボルのDesignatorにRepeatキーワードを指定するだけで簡単に作成が可能です。
デジグネータマネージャは、プロジェクトファイルの一部として格納され、チャンネル接続のテーブルを作成し管理します。マルチチャンネルプロジェクトでは、デジグネータの変更をプロジェクトファイルに伝えるバックアノテーションなど、デザインプロセスの全体がサポートされています。
このチュートリアルでは、Altium Designerのインストール先にある \Examples\Reference Designsフォルダにあるサンプルファイル「Peak Detector - Multi channel.PrjPcb」を使ってマルチチャンネルデザインを紹介します。

このデザインは、親シートとバンクシート、チャンネルシートの3段階の階層から構成されています。親シート(Peak Detector.SchDoc)には、4つのバンク用に一つのシートシンボルが使用されています(Bank.SchDocを4回参照)。バンク回路には、各バンクでシートシンボルが8チャンネル分として使用され、トータルで32チャンネルの構成になっています。これらのチャンネルは個々に独立して作成されているのではなく、一つの回路図をRepeatコマンドを使用してPeak Detector - Channel.SchDocを各チャンネルで参照しています。ルーム名とコンポーネントのデジグネータの形式は、この階層デザインの影響を受けます。

マルチチャンネルデザインの作成

このデザインを作成する際にはPCBプロジェクトファイルを作成し、このプロジェクトで使用する3つの回路図ファイルPeak Detector.SchDoc (トップシート、あるいは親シート)、Bank.SchDoc (バンクレベル)、Peak Detector-channel.SchDoc(チャンネルレベル)をプロジェクトに追加します。
1. 下図に示すようにチャンネルとして使用する回路(Peak Detector-Channel.SchDoc)を独立した回路図として作成し、この新しい回路図をPCBプロジェクトファイルに追加します。

2. 次にバンクレベルの回路図(Bank.SchDoc)を作成します。チャンネルとして参照する回路図Peak Detector-channel.SchDocのシートシンボルを配置します。
3. Place » Sheet Symbolを選択し、シートシンボルを配置します。新たにシートシンボルをダブルクリックし、Sheet SymbolダイアログのPropertiesタブを表示します。

シートシンボルのデジグネータ名は、各チャンネルの各コンポーネントを区別するために使用されます。上記の例では、シートシンボルのDesignator(識別子)の名前は「PD」です。お好きな名前をつけることができますが、識別子の名称をできるだけ短くするため、シートシンボルには短い名前をお勧めします。これは、プロジェクトがコンパイルされる時シートシンボル名、及びチャンネル番号がデジグネータに追加されるからです、例えば、R1はR1_PD 1になります。
4. Filenameフィールドに、使用したいチャンネル回路図の名前を入力します。例えば、Peak Detector-channel.SchDoc。
first_channelパラメータには、Repeatコマンドで1以上を設定する必要があります。例: Repeat(PD,1,8)5. Designator欄にRepeatコマンドを入力し、必要なチャンネル回路図の参照回数を指定します。フォーマットは次のとおりです:
Repeat(sheet_symbol_name,first_channel,last_channel)
この例では、コマンドRepeat(PD,1,8)をDesignatorフィールドに入力し、Peak Detector回路図を名前PDとして (1,8)で8回参照します。
6. OKボタンをクリックし、Sheet Symbolダイアログを閉じます。シートシンボルがマルチチャンネルを示す状態に変わります。

7. すべてのサブシートで共通なネットは、通常と同じ方法で接続します。繰り返しの各サブシートで別に接続するネットは、バスとして供給し、そのバスの一つの要素を各サブシートで接続します。
上の例では、(Pのようにバス幅を含まずに)バス名がワイヤ上に配置され、Repeatキーワードを含んだシートエントリに接続されています。デザインをコンパイルするとこのバスは(P1からP8の)独立したネットへ展開され、各チャンネルシートへ接続されます。P1は、サブシートPD_1、P2はサブシートPD_2へ接続され、他のチャンネルも同様に接続されます。
8. 親シートPeak Detector.SchDocを作成し、Place » Sheet Symbolコマンドを使用して、下位レベルのシートシンボルBank.SchDocを作成します。

上記の例では、シートシンボルのDesignator名はBANKです。従って、シートシンボルBANKの Sheet SymbolダイアログのDesignatorフィールドに、コマンドRepeat(BANK,1,4)と入力することで、(1,4)でBank回路図が4回参照されます。
上のサンプルでワイヤ上のネットラベルにはバスの要素番号が無く、シートシンボル内にはRepeatキーワードが含まれている点に注意してください。デザインがコンパイルされると、各ネット(OFF1からOFF4)は各チャンネルの各ネットに割り当てられます。

ルームとデジグネータの形式設定

回路図を作成したら、回路図上の1つの論理的なコンポーネントからPCBで実際に複数割り当てられる複数のデジグネータとルーム名の形式が設定できます。
論理的なデジグネータとは、元の回路図コンポーネントに割り当てられているものです。物理的なデジグネータとは、PCBデザイン上に配置されているコンポーネントに割り当てられているものです。マルチチャンネルデザインを作成した場合、繰り返し使用されるチャンネルのコンポーネントの論理的なデジグネータは同じになりますが、PCBデザインでの物理的なデジグネータは、各コンポーネントで別の値になります。
1. メニューからProject » Project Optionsを選択します。Options for ProjectダイアログのMulti-Channelタブをクリックし、ルームとコンポーネントのデジグネータ名の形式を設定します。

ルーム名の設定

1. Room Naming Styleのドロップダウンリストをクリックし、デザイン内のルーム名の形式を適切なものから選択します。これらのルームは、プロジェクトの回路図からPCBへ更新を行う際、デフォルトで作成されます。フラットが2種類、階層が3種類の合計5種類のスタイルが用意されています。

フラットルーム名の形式

階層ルーム名の形式

Flat Numeric with Names

Numeric Name Path

Flat Alpha with Names

Alpha Name Path

 

Mixed Name Path

階層ルーム名は関連するチャンネルパス階層のすべてのシートシンボルのデジグネータ(ChannelPrefix + ChannelIndex)をつなぐことで形成されます。
2. リストからスタイルを選択すると、Multi-Channelタブでは(下図のように)、表記がすぐに更新されます。イメージは、2x2 チャンネルのデザインになります。グリッドが表示されている大きなエリアは2つの上位チャンネル(バンク)を表し(サンプルでは、2つのコンポーネントが示され)ています。デザインがコンパイルされると、各バンクと下位レベルのチャンネルを含む、デザインの各シートに対応するルームが作成されます。イメージで示されている2x2 チャンネルのデザインでは、2つのバンク用と下位レベルの4つのチャンネル用の合計6個のルームが作成されます。
レベルセパレータとして使用できる文字に制限はありませんが、判別しやすくするには英数字以外の文字を 使用してください。
サンプルのPeak Detectorでは、トップレベルのシート用(1)、4つのバンク用(4)、各バンクの8チャンネルのシート用(32)に合計37のルームが作成されます。
3. 階層名を使う際には、Level Separator for Pathsの欄で、パス情報を分けるのに使用する文字/シンボルを指定することができます(例えば、パスを含む形式)。

コンポーネント名の設定

コンポーネントの名称を設定するデジグネータ形式がいくつか用意されています。フォーマットから選択するか、キーワードを使って独自の形式を定義できます。
1. コンポーネントのデジグネータフォーマットを設定するには、Designator Formatのドロップダウンリストから適切なものを選択します。定義済みのフォーマットがフラットで5種類、階層で3種類の合計8種類用意されています。

フラットデジグネータの形式

$Component$ChannelAlpha

$Component_$ChannelPrefix$ChannelAlpha

$Component_$ChannelIndex

$Component_$ChannelPrefix$ChannelIndex

$ComponentPrefix_$ChannelIndex_$ComponentIndex

階層デジグネータの形式

$Component_$RoomName

$RoomName_$Component

$ComponentPrefix_$RoomName_$ComponentIndex

フラットデジグネータの形式では、各コンポーネントのデジグネータを初めのチャンネルから連続的に設定していきます。
階層形式では、コンポーネントのデジグネータにRoom Nameが含まれます。Room Naming Styleで2つのフラット形式のどちらかを選択した場合は、コンポーネントデジグネータのスタイルもフラットになります。但し、Room Namingで階層形式を選択した場合は、パス情報が含まれるためコンポーネントのデジグネータも階層形式になります。

独自のデジグネータフォーマットの定義

Room Naming Styleが、コンポーネントの名称に関係するのは、デジグネータフォーマットに文字列 $RoomName が含まれている場合だけです。コンポーネントのデジグネータフォーマットは、Designator Format欄に直接入力することで独自の形式を定義することもできます。フォーマットを定義するのに次のキーワードが使用できます。

キーワード

説明

$RoomName

Room Naming Style欄で選択された形式によって決まるルームの名称

$Component

コンポーネントのロジカルデジグネータ

$ComponentPrefix

コンポーネントのロジカルデジグネータプリフィックス(例:U1であればU)

$ComponentIndex

コンポーネントのロジカルデジグネータインデックス(例:U1であれば1)

$ChannelPrefix

ロジカルシートシンボルデジグネータ

$ChannelIndex

チャンネルインデックス

$ChannelAlpha

チャンネルインデックスをアルファベットで表記。この形式は、チャンネルの合計が26チャンネル以下の場合、あるいは階層デジグネータ形式を使用している場合に便利です。


プロジェクトのコンパイル

ルームと/または、コンポーネントデジグネータの形式を変更した場合は、プロジェクトのコンパイルを行う必要があります。
1. プロジェクトをコンパイルするには、Project » Compile PCB Projectを選択します。マルチチャンネルデザインのコンパイルを行った後、回路図エディタでは、一枚のシートが表示されているだけですが、デザインウィンドウ内の回路図シートの下には、チャンネル(または、バンク)に対応したタブが表示されます。タブの名称は、シートシンボル名にチャンネル番号が追加されたものになります。例:BANKA
2. デザインがコンパイルされれば、通常の方法(Design » Update PCB)でPCBエディタに情報を転送することができます。転送のプロセスで各回路図シートに対応したコンポーネントクラス、コンポーネントクラスに対応したルームが自動的に作成され、そのルームの各クラスにコンポーネントがグループ化され、配置可能な状態になります。
3. PCBエディタで1チャンネル分の配置、配線を行った後、その情報を他のチャンネルにコピーするには、Design » Rooms » Copy Room Formatsを選択します。

チャンネルデジグネータの割り当て表示

マルチチャンネルのデジグネータを確認するために、プロジェクトの全回路図ドキュメントに使用されているコンポーネントの論理的なデジグネータと物理的なデジグネータを表示させることができます。
マルチチャンネルデザインのコンポーネントのデジグネータを確認するには:
1. Project » View Channelsを実行するとProject Componentsダイアログが表示され、回路図ドキメントの各コンポーネントの論理的及び物理的なデジグネータが表示されます。

チャンネルの回路図は常に1枚だけで、各チャンネルに対応したデジグネータの割当てがテーブル(Project » View Channelsで表示)に保存されています。表には、プロジェクトの回路図名とチャンネル数が表示されます。上に示す例では、ルーム名とコンポーネント名の表記が使われています:Mixed Name Pathと$Component_$ChannelPrefix$ChannelIndex
各チャンネルのデジグネータは、デジグネータとチャンネル番号の引数を組み合わせた形で、例えば、Peak Detector - channel.SchDocのデジグネータ C1は、チャンネル1ではC1_PD1、チャンネル32ではC1_PD32でPCBへ更新されます。
2. 論理的なデジグネータをクリックすると、元の回路図のコンポーネントへジャンプします。コンポーネントはデザインウィンドウの中心に拡大表示されます。ダイアログは開いたままで、他のコンポーネントへジャンプすることができます。
3. Component ReportボタンをクリックするとReport Previewダイアログがオープンし、プロジェクトのコンポーネントレポートのプリントプレビューが表示されます。レポートをプリントするには、Printボタンをクリックします。Printダイアログが表示されます。OKボタンをクリックすると、レポートがプリンターへ転送されます。
4. Report PreviewダイアログからExportを選択すると、プロジェクトのコンポーネントレポートがスプレッドシート(.xls)や.pdf形式で、ファイルとして保存することができます。ファイルを保存すると、Open Reportボタンをクリックすることで(Microsoft ExcelやAdobe Readerなどの)適切なアプリケーションでそのファイルをオープンすることができます。
5. Closeボタンをクリックし、プリントプレビューモードを閉じます。OKボタンをクリックし、 Project Componentsダイアログを閉じます。

PCB上でのデジグネータの表示

マルチチャンネルデザインでは、結局長くなってしまったデジグネータのストリングスを配置するのは難しいかもしれません。短い名前になるような命名オプションを選ぶ場合と同様な、別のオプションとして、代わりに、オリジナルで、ロジカルなコンポーネントデジグネータを表示する方法があります。例えば、C30_CIN1 は C30 と表示されます。この状態では、コンポーネントオーバーレイ上の各チャンネルの周囲にボックスを作図するなど、基板に個別のチャンネルを示す他の表記を追加することが当然必要になります。
Board Options ダイアログ(Design » Board Options)で、PCB 上の論理デジグネータ表示と物理デジグネータ表示を選択することができます。マルチチャンネルデザインにおいてコンポーネントの論理デジグネータの表示を選択した場合、論理デジグネータがPCB上と、印刷やガーバーなどの生成されるすべての出力上に表示されます。

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