複数オブジェクトの編集(旧)

このドキュメントでは、デザイン上の複数オブジェクトの編集を行う際のテクニックを紹介します。 Find Similar ObjectsダイアログとInspectorパネルを組み合わせての使用方法やパラメータマネージャとモデルマネージャについてもカバーしています。 最後にデザインオブジェクトの検索と編集を行うためのクエリとListパネルを紹介します。

Tutorial TU0115 (v2.6) March 10, 2008

電子設計は、回路図上で論理的な設計を行い、その後PCBのワークスペースで、実際のオブジェクトの集まりを表すプロセスです。 小規模な回路であっても、PCBワークスペースにはデザインを構成するデザインオブジェクトが数多く使用されています。 デザインプロセスでは、こうしたオブジェクトの属性を変更する必要が生じます。 それは、設計者がデザインやPCB製造、組立てで、それぞれ要求される項目のバランスを取ろうとするためです。
多くのオブジェクトの編集作業をサポートするために、以前のアルティウムのデザインツールには、グローバル編集と呼ばれる機能が用意されていました。 この機能の基本的な考えは、ひとつのオブジェクトを編集し、それを他のオブジェクトに適用させるというアプローチでした。
DXPプラットフォームのリリースに伴い、グローバル編集の手法が変更されました。 基本的なアプローチとして、編集するオブジェクトを "選択"し、その属性を"確認"し、"編集" を行います。
この "選択 - 確認 - 編集" の手順を頭に入れ、各ステップを詳しく見ていきましょう。

複数オブジェクトの選択


図1 右クリックで Find Similar Objectsを選択
実際にオブジェクトを選択するには、いくつもの方法があります。 例えば、ウィンドウズの基本的なショートカットであるマウスのクリックも使用可能です。 この方法は、選択するオブジェクトの数が少ない場合や、異なる種類のオブジェクトを同時に編集する場合には理想的です。


図2 Find Similar Objects _
ダイアログに読み込まれたオブジェクトの属性_複数の回路図シートに渡って、多くのオブジェクトを選択するには、Find Similar Objectsダイアログを使用します。 このダイアログをオープンするには、編集したいオブジェクトのどれかひとつの上で右クリックを行い、ポップアップメニューから Find Similar Objectsを選択します。
サンプルを使って、実際に手順を確認してみましょう。 ここでは回路図のパワーネットの名称をVCCから3V3に変更します。 これは全シート上のVCCパワーポートのネット属性を変更することになります。 最初に回路図上のVCCパワーポートを見つけ、その上で右クリックを行い、Find Similar Objectsをポップアップメニューから選択します。
図 2 は、回路図上のパワーポートで、右クリックを行った後に表示されるポップアップメニューです。 このFind Similar Objectsコマンドを実行するとダイアログが表示されます。 ダイアログには、クリックしたオブジェクトの属性が表示されます。 このダイログの内容は、クリックしたオブジェクトによって異なりますので注意してください。
ダイアログには、2つのカラムが確認できます。図 2 でハイライト表示されているのは、クリックしたオブジェクトの属性で、下側にネット名を示す Text が VCCとなっています。


図3 どの属性を使用して一致させるか
Find Similar Objectsダイアログの2番目のカラムは、その他のオブジェクトと何を一致させるかを指定します。 オブジェクトの各属性の値をSame(同じ)Different(異なる)Any(条件なし)と指定することで、対象となるオブジェクトが指定できます。
図 3では、Object KindSameで、ネット名を示すTextSame に設定します。 これによって、一致するオブジェクトは、ネット名VCCのパワーオブジェクトになります。


図4 どのドキュメントにこの編集を適用するか
次のステップでは、検索実行の範囲(スコープ)を設定します。 Current Document(現在編集中のドキュメント)だけか、あるいは、Open Documents(オープンしている全ドキュメント)かを選びます。 ここではプロジェクト全体に適用するよう、図4に示す通り、Open Documents に設定します。 この編集作業が全シートに適用されるように、ドキュメントを先にオープンしておく必要があります。
最後のステップでは、オープンしているすべてのドキュメントでネット名VCCのパワーオブジェクトを検索した後、どのようにするかを設定します。

図5では、この編集操作の重要な設定を示しています。 ハイライトされているオプションは、(すべてのVCCパワーポートを選択するため)Select Matching と選択されたオブジェクトを読込むための Run Inspectorです。
一致するパワーポートを選択するには、OKボタンをクリックします。
選択されたPCB オブジェクトや回路図オブジェクトのグループの位置は、矢印キーでそれぞれに再調整できます。 これらの選択されたオブジェクトは、PCB エディタ、回路図エディタのスナップグリッドに設定されている値に応じて、全体として移動します。

複数の回路図オブジェクト、PCB オブジェクトを選択でき、それぞれ別個に(選んだ順番で)再配置できます。Reposition Selected Components コマンドを使用してください(Tools » Component Placement » Reposition Selected Components または、ショートカット TOC)。
Ctrl キーを押しながら矢印キーを押すと、選択されたオブジェクトは、現在のスナップグリッド値に応じて少し移動します。
かなり大きな値(スナップグリッドの値がファクタ10など)で、選択したオブジェクトを、'ひと突きする' こともできます。 CTRL と SHIFT キーを同時に押しながら、矢印キーを使います。

回路図オブジェクトでは、 Document Options ダイアログ (Design » Document Options あるいは、ショートカット DO)で、現在の Snap Grid が設定されています。
PCB オブジェクトでは、 Board Options ダイアログ (Design » Board Options あるいは、ショートカット DO)で、現在の Snap Grid が設定されています。
回路図、PCBの両オブジェクトに対して、 G のショートカットで異なるスナップグリッド値が適用されます。 View » Grids submenu サブメニュー、または Grids の右クリックメニューでも、新しいグリッド値が選べます。

図5 検索したオブジェクトに対して何を行うか
Applyボタンでも一致するパワーポートがセレクトされ、Inspectorが開きます。 ただし、このFind Similar Objectsダイアログがオープンしたままになります。 条件の設定が確実でない場合は、こちらを使用します。

オブジェクトの確認


図6 インスペクタに選択されたオブジェクトの属性が表示された状態
回路図とPCBエディタには、共にInspector というパネルが用意されています。 Inspector の基本的な動作は、現在、選択されているすべてのオブジェクトについて、その全属性を表示することです。 選択されているオブジェクトが同じ種類のオブジェクトであれば、例えば、 図 6 のように10個のパワーポートの属性が表示されます。
選択されたオブジェクトの属性がすべて同じであれば、その値が表示されます。 例では10個のパワーポートのOrientation(角度)がすべて90度になっています。
各パワーポートの属性(例えば、位置X1)が異なる値の場合は、<...> と表示されます。 10個のオブジェクトのX1は、同じでない、すなわち別の場所にあることを示しています。
図 6 のInspector の上側に2つのオプションがあります。 これら2つの設定は重要で、どこからオブジェクトを検索したのか - カレントドキュメント(current document)か、オープンされている全ドキュメント(open documents)か、同じプロジェクトのオープンされている全ドキュメント(open documents of the same project)か、を設定します。 選択した全パワーポートをインスペクタに読み込むには、open documentsopen documents of the same projectに設定する必要があります。

SCH インスペクタとは?
SCH インスペクタは、今、選択されているオブジェクトの属性を表示するパネルです。 選択されているオブジェクトは、1つでも複数でもかまいません。 複数のオブジェクトが選択されている場合は、選択オブジェクトに共通の属性だけが表示されます。 共通の属性が同じ値であればその値が表示され、同じでない場合は、<...>と表示されます。SCH インスペクタに値を入力し、Enter キーを押すと、選択されているすべてのオブジェクトの属性がただちに変更されます。
SCH インスペクタには、たいへん便利に使える特性があります。
第一に、これはパネルなので、常に表示しておくことができます。ダイアログをオープンするようにダブルクリックする必要はありません。 ワークスペース上でオブジェクトをクリックし、選択すれば属性がすぐに表示されます。 デザインの設定を確認する場合など、これはより効果的です。 例えば、PCB 上のいくつかのコンポーネントについて、デジグネータの文字の高さを確認したい場合などです。 SCH インスペクタが表示されていれば、単にデジグネータをクリックするだけで値が確認できます。次々とクリックし、値を確認していくことができます。 これはデジグネータをダブルクリックし、値を確認し、ダイアログを閉じる、次のデジグネータをダブルクリックし...、を繰り返すよりずっと速くなります。
第二に、SCH インスペクタは、異なるオブジェクトの共通の属性を表示し、編集ができます。 方法は後ほど、このチュートリアルで紹介します。
SCH インスペクタの下側に、選択されているオブジェクトの数が表示されるので、予期した動作をするか、ここで常にチェックしてください。

オブジェクトの編集


図7 ネット名に該当するTextの編集
編集したいオブジェクトを"選択"し、インスペクタで属性を"確認"できました。次は"編集"を行います。
ネット名を編集するためにText をクリックすると、 ... という表示ボタンが、Text フィールドの終わりに表示されます。 部分的な文字列の編集を行いたい場合に、このボタンをクリックすることができます。 ここでは、文字全体を変更しますので、セルの全体の内容を新しいテキスト、3V3 に置き換えます。
Text値に対して行った変更を選択した全オブジェクトに適用するには、Enter キーを押すか、SCH インスペクタ内の別のセルをクリックします。
編集中に気が変わった場合、Esc キーを押せば、編集は中断します。 編集のやり直し(アンドゥ)を行うには、メニューから Edit » Undoを実行します。 複数の回路図シートに対して編集を適用させた場合は、各シート事にアンドゥの操作を行ってください。

図 8 は、文字を変更し、Enter キーを押した状態のSCH Inspectorパネルを示しています。 その横は、編集されたパワーポートの1つです。
この方法を使って、回路図エディタやPCB エディタで、あらゆる種類のオブジェクトの一括編集が可能です。
編集を実行した後は、回路図上のその他のオブジェクトが消えているか、あるいはマスクされているはずです。 マスクされている場合は、編集することができません。 マスク状態を解除するには、ワークスペース右下にある Clear ボタンをクリック(ショートカット Shift + C )します。

図8 更新された10個のパワーポートのうちの1つ

グループオブジェクトの編集


図9 470uF 16V のコンデンサを検索
先に行った編集は、プリミティブオブジェクトに対して行われました。 プリミティブオブジェクトは、回路図上で使用されている基本的なオブジェクトのひとつです。 コンポーネントなど、より複雑なオブジェクトはグループオブジェクトと呼ばれ、これらは基本的にプリミティブなオブジェクトの集まりです。 例えば、回路図上のコンポーネントは、ドローイングオブジェクト、文字、パラメータ、ピン及び参照するモデルの集まりです。 グループオブジェクトに属するプリミティブオブジェクトは"子"オブジェクト、グループオブジェクトは、それらの"親"オブジェクトと呼ばれます。
一般的なグループオブジェクトの編集例を見ていきましょう。 デザインに、いくつかの470uF 16Vのコンデンサがあり、フットプリントにMCCT-Bが使用されている場合を考えます。 現在、電圧値はコンポーネントのコメントの一部として指定されています。 この電圧値をコンポーネントのパラメータとして定義し直し、回路図上にこのパラメータを表示させてみます。

これから実行する手順は次のとおりです。
1.コンデンサを選択します。値は470uF 16V 、フットプリントは MCCT-B です。
2.コメントを470uF に変更します(16Vの文字は削除)。
3.新しいパラメータをこれらのコンポーネントに追加します。Voltage という名前で、値は16V です。
4.回路図にこのパラメータが表示されるように設定を変更します。
編集内容は複雑かもしれませんが、実際に手順に沿って操作してみましょう。

Step 1. コンデンサの選択

470uF 16V のコンデンサを選択するには、コンポーネントシンボルのいずれかひとつの上で右クリックして、Find Similar Objects をポップアップメニューから選びます。
以前の例と同じ手順で操作を行いますが、今回は、図 9 に示すように、同じ Part Comment 、同じ Current Footprint をコンポーネントに設定します。
また、デジグネータの文字列がCで始まるコンポーネントを一致条件にできることに注意してください。 これは、コンポーネントのデジグネータの値を Find Similar Objects ダイアログで変更することで実行されます。値は C* にしてください(図 9)。 OK ボタンをクリックして、一致するコンデンサを選びます。

Step 2. コメント文字の変更


図10 ind Similar Objectsの操作を実行した後の表示 。 シート上で3つのコンデンサが検索されました。

Find Similar Objectsダイアログを実行した後、SCH Inspector パネルが開きます(Find Similar Objects ダイアログ内のRun Inspector オプションを有効にしておいてください)。 その背後には、回路図シート上で一致するオブジェクトが選択されて表示されます。 Find Similar ObjectダイアログでZoom MatchingMask Matchingオプションが有効になっていれば、ズーム表示され、その他の一致しないオブジェクトは、消えているか、マスクされています。
図 10 にその結果が表示されています。 このページでは、3つのコンデンサが検索されています。
SCH Inspector パネルの下側のステータスラインを確認すると、同じコンデンサが他のシート上にあることが確認できます。
コメント文字を変更するには、文字列から16V を単に削除するだけです。図 11 をご覧ください。変更を確定させるには、Enterキーを押します。

図12 ユーザ定義のパラメータを追加する


図11 コンデンサの値が変更されました

Step 3. コンポーネントへ新規パラメータを追加

次に行う変更では、これら4つのコンポーネントにVoltage という新しいパラメータを追加し、その値を16Vに設定します。 これを行うには、SCH Inspector パネルの下側にあるAdd User Parameter機能を使用します(図 12)。 先に値を追加し、それからパラメータ名を入力することに注意してください。
1. まず、新しいパラメータの値16VをAdd User Parameter の欄に入力します。
2. 変更を適用するには、Enterキーを押します。 キーを押すとAdd new parameter to XX objects ダイアログが表示されます。
3. 新しいパラメータ名を入力し、OKボタンをクリックします。
注記 : 各パラメータの横にある赤い十字(X)の上でクリックすると、削除になります。
これでSCH Inspectorパネルには、値が16Vの新しい Voltage パラメータがリストの下側に追加されます。図 13 を参照してください。 この方法で、必要なパラメータをいくつでも追加していくことが可能です。

図13 新しいパラメータの表示設定を変更


図14 ユーザ定義のパラメータ

Step 4. Voltageパラメータを表示するための設定

最後のステップは、新しいVoltageパラメータを表示するように4つのコンデンサに設定します。 パラメータの表示は、コンポーネントではなく、パラメータ自身の属性になります。 このため、この変更はコンポーネントの属性が表示されているSCH Inspector からは、変更できません。

図15 親のコンポーネント属性へ戻るには

パラメータの属性にアクセスするには、SCH Inspector パネルの下側にあるParametersのリストで、ハイパーリンクが設定されているパラメータ名 Voltage をクリックします。 これを実行すると、選択されているコンポーネントのVoltageパラメータの属性がSCH Inspector パネルに読み込まれ、編集可能になります。 これは、SCH Inspector パネルの上側の Object Kind が、''Parameter'となることで確認できます。
これで回路図にVoltageパラメータを表示させることができます。 表示するには、図 14に示すように Hide チェックボックスをオフにしてください。

他の属性を編集するなどで、親オブジェクトであるコンポーネントに戻りたい場合は、 図 15 に示すようにリンクが設定されているOwner をクリックします。
これでフットプリントがMCCT-B のコンデンサのコメントを470uF に更新されました。 また、Voltageという新しいパラメータが追加され、値を16Vに設定し、更にパラメータが表示されるようにしました。

異なる種類のオブジェクトに対する一括編集

PCB Inspectorパネルは、複数の同じ種類のオブジェクトだけではなく、同じ属性を持った異なる種類のオブジェクトに対しても使用できます。

既存配線のネット名変更


図16 選択したトラックとビアのネット名変更

最初の例として回路図で、あるネットから1つのピンを削除し、それを別のネットへ追加する変更があった場合を考えます。
PCBを更新する際、そのネットがPCB上で既に配線が終了した場合は、違うネット名が接続されていることになります。 配線には、トラックやビアなどその他のオブジェクトも含まれます。
この状態を解消するのにいくつかの方法が考えられます。 一番簡単な方法として、PCB Inspector パネルを使用します。 その手順を見てみましょう。
1.PCBで、ネット名を変更する必要がある配線の全プリミティブをEdit » Select » Connected Copperコマンド(ショートカット Ctrl + H)で選択します。
2. PCB Inspectorパネルが表示されていなければ、表示します[ショートカットF11]。
3. PCB Inspectorでは、選択されたオブジェクトの共通の属性だけが表示されます。 正しく選択されていれば、これらの属性のひとつにNet があるはずです。 これを変更するには、単にドロップダウンリストから新しいネット名を選択し、変更を適用するためにEnterキーを押すだけです。 これで配線済みの異なる全オブジェクトのネット属性は変更されます。

異なるオブジェクトのレイヤ属性変更


図17 選択したオブジェクトのレイヤ変更

別の例として、あるメカニカルレイヤから別のメカニカルレイヤへ全オブジェクトを移動する場合を考えてみます。 これを行うには:
1.PCBエディタウィンドウの下側にあるLayer タブをクリックして、カレントのメカニカルレイヤをアクティブにします。
2. Select » All on Layerコマンド[ショートカット S, Y ]で、そのレイヤの全オブジェクトをセレクトします。
3. PCB Inspectorパネルが表示されていなければ、表示します[ショートカットF11]。
4. Layerのリストから新しいレイヤ名を選び、Enterキーを押して変更を適用します。

設計オブジェクトのロック

設計オブジェクトには、ロックをかけて回路図ドキュメントやPCB ドキュメントでの移動や編集をできなくすることができます。 ロックをかけるには、Locked を有効にします。 たとえば、特定オブジェクトの位置やサイズがとても重要な場合にロックをかけます。 この Locked 属性は、設計オブジェクトのダイアログで有効になります。これらの Locked 属性は、SCH ListPCB List パネルでもまとめて設定できます。

回路図シートやPCBドキュメント上の設計オブジェクトをロックする


図18 ワイヤ属性のロックを有効にする

1.回路図オブジェクトのグループをロックするには、SCH List パネルを使って、Locked オプションを切り替えます。図 18(左)を参照してください。 PCBオブジェクトのグループについても同じように操作できます。やはり、PCB List パネルを使います。
2.それぞれのオブジェクトをロックするには、オブジェクトをダブルクリックします。属性ダイアログが表示されるので、Locked オプションを有効にします。図 18 (右)を参照してください。


図19 ロックされた設計オブジェクトをグラフィカルに編集しようとした

Locked 属性が有効になっているオブジェクトを移動させたり、回転させたりしようとすると、ダイアログが表示され、編集を続けるかどうか尋ねてきます(図 19)。
Preferences ダイアログ(回路図エディタやPCB エディタで、それぞれ、Tools » Schematic Preferences または Tools » Preferences )のSchematic - Graphical Editing ページ(図 20)、またはPCB Editor - General ページにおいて、Protect Locked Objects オプションが有効で、設計オプションが locked に指定されているときは、このオブジェクトは選択したり、グラフィカルに編集したりすることはできません。 Locked オブジェクトをダブルクリックして、Locked 属性を無効にします。または、Preferences ダイアログの中にあるSchematic フォルダの下側、Graphical Editing ページでProtect Locked Objects オプションを無効にして、グラフィカルに編集できるようにします。

その他のオブジェクトと一緒に、ロックされたオブジェクトを選んだ場合、Protect Locked Objectsが有効なら、ロックされていないオブジェクトだけが選択でき、グループとして移動させることができるようになります。

図20 回路図内でロックされたオブジェクトの保護 - Preferences ダイアログの Graphical Editing ページ

パラメータマネージャでの複数パラメータの編集


図21 編集したいパラメータの種類を選択

ユーザが定義したデザイン属性をパラメータとしてデザインに追加することができます。 コンポーネントパラメータは、コンポーンネトのレートから在庫情報、PCBのコンポーネントクラスのメンバーシップまで、あらゆる情報を定義するために使用できます。 コンポーネントのデータシートへのリンクなどにも使えます。 パラメータは、PCBデザインの要求を定義するためにネットに追加することもできます。 また、ネットをPCBのネットクラスへ追加することもできます。ドキュメントパラメータは、シートのタイトル、設計者の名前などを定義して使用することができます。
パラメータは、個別に追加/編集が可能です。 また、Parameter Table Editorダイアログを使用して、デザイン全体やライブラリ全体に追加することができます。 エディタをオープンすると、デザイン全体からパラメータの全情報を集め、テーブル形式で表示します。 このParameter Table Editor を起動するには、 Tools » Parameter Managerを実行します。
メニューからParameter Manager を実行すると、まず、Parameter Editor Options ダイアログが最初に表示されます(図 21)。 ここで、どの種類のパラメータをParameter Table Editor ダイアログに読み込むか決定します。

コンポーネントパラメータを編集したい場合、Include Parameters Owned ByセクションのParts 以外のチェックボックスは、すべてオフにします。 ドキュメントパラメータについて作業を行う場合は、Documents チェックボックスだけをオンにしてください。 また、Exclude System Parameters チェックボックスは注意してください。 これはコンポーネントモデルの設定や、テンプレートで設定されているドキュメントパラメータなどのシステムパラメータを除外するオプションです。 このオプションは、パラメータ管理に関する操作に詳しくなってから使用してください。
ここでいくつかのパラメータの編集を行ってみましょう。 次の記述とイメージは、 4 Port Serial Interface リファレンスデザインの例に基づいています。 Parameter Editor Options ダイアログを 図 19 に示すように設定してください。

パラメータ名の変更

下記の 図 22 において、''Text Field1'という既存のパラメータが確認できます。 これを変更します。 ''Component Type' がより適した名称です。

図22 Parameter Table Editorを使って、既存のパラメータ名を変更


図23 名称が変更されたパラメータ

パラメータの名称を変更するには、カラムのセル上で右クリックを行い、ポップアップメニューから Renameを実行します。 Renameダイアログが表示されますので、 新しい名称を入力し、OKボタンをクリックします。 名称が変更され、(図 23 に示すように)カラム右上に小さな青の三角形の印が表示されます。 このアイコンは、このセルの値が変更されたことを示しています。 ここで使用されるアイコンの詳細は、カーソルをダイアログ上に移動し、F1を押すと確認できます。

また、図 22 でいくつかのコンポーネントでは、このComponent Typeパラメータが無く、斜線になっていることが判ります。 次にその他のすべてのコンポーネントにComponent Type パラメータを追加してみます。

パラメータの追加


図24 選択したコンポーネントにこのパラメータを追加 - 左が追加前、右が追加後


図25 セルを選択し、右クリック、Edit を実行(左)、新しい値を入力し(中央)、 Enter キーを押す(右)

パラメータが無いコンポーネントにパラメータを追加するには、それらのセルをエディタで選択します。Shift + クリック、または Ctrl + クリックしてください。 その後、右クリックを実行し、ポップアップメニューからAdd を実行します。
Addを実行した後は、各セルに緑色の+マークが表示されます。 これは、新しいパラメータが追加されたことを示しています。
これで各コンポーネントにComponent Typeパラメータが追加され、定義ができます。 Parameter Table Editorダイアログでは、標準的な編集のショートカットがサポートされています。 カーソルをグリッド周りの'walk'の上に移動し、F2キーを押すと編集ができます。 編集後、Enterキーを押すと、適用されます。 また、一度に複数のセルも編集できます。 複数のセルを選択し、その上で右クリックを実行し、ポップアップメニューからEditを選択します。 新しい値を入力し、Enterキーを押すとセレクトしていたすべてのセルに編集が適用されます。

変更したパラメータを適用するには


図26 システムへの変更は、常にEngineering Change Orderダイアログを通じて適用

現時点でパラメータの編集は、Parameter Table Editor上で行っていますが、まだ、回路図シート上のコンポーネントに対して適用されていません。 コンポーネントにこれらの変更を適用するには、ECO (Engineering Change Order:変更指示)を実行し、このECOをデザインに適用する必要があります。
パラメータの編集が終了したら、Accept Changes (Create ECO) ボタンをクリックします。 Parameter Editor Tableを閉じると、Engineering Change Orderダイアログが表示されます。
Validate Changesボタンをクリックして変更箇所を確認し、Execute Changesボタンをクリックし、 コンポーネントにパラメータの変更を適用します。 変更が済めば、Engineering Change Orderダイアログを閉じます。

複数のコンポーネントモデルの管理


図27 モデル編集の領域が表示された回路図ライブラリエディタ

回路図シンボルは、回路図上におけるコンポーネントを現しています。 ワイヤは、コンポーネントのピンを接続し、接続情報を生成します。 これは回路図で生成されたもの、あるいはデザイン内部的な接続構造で、最終的には実際のPCBへ展開する必要があります。
元の回路図をPCBレイアウトや回路シミュレーションなどの別の形式へ変換するには、各コンポーネントに供給されているモデルの情報が必要になります。
PCBフットプリントやSpiceシミュレーション、シグナルインテグリティ解析、3Dモデルなど、異なるモデルの種類がサポートされています。 これらは通常、コンポーネントライブラリとして定義しますが、回路図シート上でも定義可能です。 個別のコンポーネントにモデルを追加するのは簡単です。 図 25に示すように、ライブラリ編集ウィンドウの下側にモデル編集の領域が用意され、そこから追加ができます。

ライブラリ・コンポーネントの作成とモデルのリンク方法についての詳細は、TU0103 ライブラリコンポーネントの作成 を参照してください。
コンポーネントモデルについてより詳しく知りたい場合は、AR0104 コンポーネント、モデル、ライブラリの概要 AR0104%20Component,%20Model%20and%20Library%20Concepts.pdfを参照してください。


図28 複数のコンポーネントにわたってモデルを管理するには、モデルマネージャを使用します

複数コンポーネントに対してモデルの設定を追加/削除するには、ライブラリエディタのモデルマネージャを使用します。 ライブラリエディタからモデルマネージャをオープンするには、メニューから Tools » Model Managerを実行します。 Model Managerダイアログがオープンし、左側にライブラリに含まれているコンポーネントのリストが表示されます。 クリックしてコンポーネントをセレクトすると、現在設定されているモデルの情報が確認できます。
モデルマネージャで可能な作業は以下のとおりです。

  • コンポーネントに対する新規モデルの追加
  • あるコンポーネントからモデルをコピーし、別のコンポーネントへの貼り付け
  • コンポーネントからモデルの削除
  • コンポーネントに割り当てているモデルの編集

これらのコマンドはすべてダイアログのモデルリストのエリアから右クリックを実行し、ポップアップメニューから選択します。 また、モデルリストの下にあるボタンからも、いくつかのコマンドが実行できます。
図 26に示すようにモデルマネージャでPCBフットプリントがセレクトされ、これがコピーされています。 コピーされると、複数のコンポーネントに対して、貼り付けを行うことができます。 実行するには、SHIFT + クリック、または CTRL + クリックで複数尾コンポーネントをリストから選んでください。 必要なコンポーネントを選択したらModel のエリアで右クリックを実行し、ポップアップメニューから Pasteを実行します。

重要なポイントとして、複数のコンポーネントをセレクトする場合、セレクトされたコンポーネントに共通なモデルだけが表示されます。 したがって、フットプリントの貼り付けを行う際、モデルリストの表示がブランクになっても驚かないでください。 ひとつのコンポーネントだけをセレクトすれば、すぐにリストにそのコンポーネントのモデルが表示されます。

デザイン全体にわたるフットプリント管理


図29 フットプリントマネージャを使ってのPCB全体のフットプリントの確認と管理

Altium Designerの回路図エディタには、強力なFootprint Managerが用意されています。 Toolsメニューから起動(Tools » Footprint Manager)すると、フットプリントマネージャによって、プロジェクト全体の各コンポーネントの全フットプリントが確認できます。 複数のセレクトをサポートしていることで、複数のコンポーネントのフットプリントがどのようにリンクされているか、あるいはコンポーネントが保持している複数のフットプリント情報のうち、現在どれが割り当てられているかが確認でき、フットプリントの割り当てが容易に編集できます。 デザインの変更は、Altium Designerの標準的なECOシステムを介して適用され、必要に応じて回路図とPCBの両方を更新できます。

クエリを使用して複数オブジェクトの検索と編集

Altium Designer には、対象となるデザインオブジェクトを正確に特定するための強力なクエリエンジンが内蔵されています。 クエリは、基本的にデザインデータ内で何かを検索するための記述です。

オブジェクト検索のためのフィルタリング

デザインデータに対してクエリを実行するには、いくつかの方法が用意されています。 これらのひとつとして、Filter パネルにクエリを入力する方法があります。 デザインデータベースに対して、クエリを適用し、フィルタをかける場合、 各オブジェクトは適用されるかどうかクエリによってテストされます。
図 28 は回路図ライブラリの SCHLIB Filter パネルを示しています。クエリにIsPin が入力されています。 このクエリが適用されると、(Whole Libraryオプションが有効になっているので、)すべてのライブラリの各オブジェクトがチェックされ、ピンオブジェクトが集められて結果セットに追加されます。 それ以外のオブジェクトにはフィルタがかかります。


図30 SCHLIB Filterパネルを使用し、Library Editor内のライブラリ全体をピンをクエリとして検索

SCHLIB Filter パネル右側にあるオプションで結果の表示が変わります。 図 30 から、(このケースでは)ピンがフィルタを通り、セレクト、ズームされます。 それ以外の全オブジェクトはフィルタを通過せず、選択されず、マスクがかけらます(フェードアウトされ、編集不可になります)。
Selectオプションが有効になっているので、ピンは SCH Inspectorに読み込まれます。 Inspector は選択されたオブジェクトの共通の属性を表示することができ'ますが、コンポーネントのピンを編集するには、(長さを編集する以外)役に立ちません。
また、ピンはSCH Listパネルにも表示されます。 これはデザインデータをリスト表示し、複数のオブジェクトが簡単に比較、編集できます。
Mask outオプションを有効にしてフィルタを適用すると、フィルタアウトされたオブジェクトは、フェードアウトし、編集ができない状態になります。 フィルタを解除するには、ワークスペース右下にある Clear ボタンをクリックします[ショートカット SHIFT + C]。

Listパネルでの設計オブジェクトの編集 - 回路図ライブラリ


図31 Schematic Library Editorの SCHLIB List パネルに表示されたピンコンポーネント

図 31 は、回路図ライブラリエディタのSCHLIB Listパネルにピン情報が読み込まれた状態を示しています。 パネルのトップにある from のオプションが今は、 current component に設定されていることに注意してください。フィルタの場合は、これはすべてのライブラリから選択できるように設定されていました。 スコープのコントロールは、SCHLIB FilterパネルとSCHLIB Listパネルの両方にあります。これはフィルタリングと結果表示を別にコントロールするためです。 これでライブラリ内のすべてのピンを検索し、すべてのピンを見たり、編集中のコンポーネントだけを見たりすることができます。
SCHLIB List パネルは表形式になっており、オブジェクトの確認と編集には理想的です。 SCHLIB Listパネル(左上にあるオプション)でEdit モード に設定すれば、キーボードのキーを使った 'walk' around や編集が行えます。 例えば、矢印キーでグリッド値に応じた移動ができ、F2 または Spacebarで選択しているセルを編集できます。 Enterキーで変更が適用され、セルがアクティブになっていれば、Spacebar でチェックボックスの切り替えができます。
SCHLIB Listパネルはカスタマイズが可能です。 カラム上で右クリックを実行し、ポップアップメニューからChoose Columnsを実行するとカラムの追加や削除、順序の変更ができます。

デザインデータ編集のためにスプレッドシートを利用

SCHLIB List パネルをView モードではなく、Edit モードに設定する必要があります。そうすることで、データを編集し、パネルにペーストできるようになります。 SCHLIB Listパネルでデータを直接編集できるだけではなく、複数のセルを選択してSCHLIB List パネルから任意のスプレッドシートエディタにコピーし、スプレッドシートからSCHLIB List パネルに編集したものを戻すことができます。 例えば、新しいコンポーネントを作成する場合、メーカーが供給しているPDFのデータシートからすべてのピン情報をスプレッドシートにコピーします。 このデータを1ピンずつライブラリエディタに入力するのではなく、次のような作業が行えます:
1.新しく作成したコンポーネントでひとつピンを配置し、それをコピーし、Paste Array コマンドを使用し、必要な数だけ貼り付けます。
2. Filter パネルでクエリIsPin を使用し、Listパネルにこれらのピン情報を読み込みます。

図32 クリップボードにコピーされたスプレッドシートエディタでのピンデータ

3.ピンデータのカラムが、スプレッドシートエディタのカラムと一致するように適切な設定を行います。
4.スプレッドシートエディタに切り替え、ピンデータに必要なブロックを選択し、コピーします。
5. SCHLIB Listパネルに戻り、同じセルのブロックをセレクトし、右クリックを行い、ポップアップメニューからPasteを実行します。
データがスプレッドシートでどのように表示されるか見るために、データのブロックを先にSCHLIB Listからスプレッドシートにコピーをしたいかもしれません。 この手法を使うと、ピン数が多いコンポーネントの新規作成が、素早くできます。 図 32 から 図 34 までは、この手順を示しています。


図33 SCHLIB List パネル上でセルのブロックを選択し、右クリックから Pasteを実行


図34 ピンデータが貼り付けられた後のSCHLIB Listパネル

スプレッドシートやテーブルからペーストしたデータの作成と編集

Smart Grid Paste ツールを使用すると、設計オブジェクトの属性を迅速に更新したり、プリミティブのグループをすばやく簡単に作成したりできます。 このツールは、回路図エディタや、PCBエディタのList パネルの右クリックメニューで有効になります。

Smart Grid Paste ツールの詳細は、TR0104 Altium Designer パネルリファレンス TR0104%20Altium%20Designer%20Panels%20Reference.PDFEditing Attributes with Smart Grid Paste Tools のセクションを参照してください。

ワークスペースでフィルタリングされたオブジェクトの - 動作について


図35 フィルタリング/ハイライトのプロセス図

図 35は、デザインデータがどのようにしてフィルタリングされ、ハイライトされるかを示しています。 Filterパネルでクエリを記述したり、Find Similar Objects (FSO)ダイアログ(実際には、背後でクエリが動作)の設定によって、あるいは、Navigatorパネルでオブジェクトを選択することによって、フィルタリングのプロセスがコントロールできることに注意してください。 上図にPCBパネルは示されていませんが、NavigatorパネルのようにPCBワークスペースで、データをフィルタすることが可能です。
ハイライトエンジンは、フィルタされたデータをどのようにして表示するかを決定します。
メインのグラフィカルな編集ウィンドウでフィルタされた表示データ(Display data)に対して(ハイライトエンジンにそれをセレクトするように指示すれば)Inspectorから、あるいはListパネルからアクセスすることができます。

クエリ作成のヒント

  • クエリのキーワードに慣れるまではQuery Helperを使用してください。 ヘルパーを表示するには、Filter パネルにあるHelperボタンをクリックします。
  • キーワード上でF1 キーを押すと、そのキーワードのオンラインヘルプが表示されます。
  • Query Helperダイアログ下側にあるMaskフィールド を使って検索するキーワードの絞込みができます。 *** (ワイルドカード)を文字列の先頭に入力すると、すべてのキーワードが表示されます。
  • Query Helperダイアログを閉じる前に Check Syntaxボタンをクリックし、チェックを行ってください。
  • 例えば、''DIP14' のように、変数はクオーテーションで囲んでください。
  • クエリが適用される優先順位の問題を解消するために、括弧()を使用し、正しい順序になるようにしてください。

クエリについての概要は、AR0109 クエリ言語入門 AR0109%20Introduction%20to%20the%20Query%20Language.pdfを、クエリの記述方法についての詳細は、AR0129 クエリ言語の詳細ガイド AR0129%20An%20Insiders%20Guide%20to%20the%20Query%20Language.pdfを参照してください。

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