PDN Analyzer

概略

この記事では、CSTを搭載したPDN Analyzerを紹介し、手動でのインポートやエクスポートを行うことなく、Altium Designer内で現在のPCBプロジェクトのPI-DC解析(IRドロップ解析)を直接実行する仕組みを説明します。わかりやすい2Dおよび3Dの解析結果を通じて、電圧降下、電流密度、銅箔形状の寸法、ビアの使用状況を評価する方法を紹介するとともに、利用に必要な主な要件と、埋め込み部品に関する現時点での制限についても解説します。設計環境に統合されたツールを使って、基板レイアウトのDC配電を確認・改善するための実践的な概要を知りたい方に向けて、その重要性と始め方を説明します。電源供給設計の効率と信頼性を高める方法を、ぜひご覧ください。

- PI-DC解析(IRドロップ解析)によって、電源経路とグラウンド経路の電圧損失、電流密度、潜在的な信頼性の問題など、何が明らかになるのかを理解できます。
- PDN AnalyzerとAltium Designerの連携、利用に必要な要件、PCBエディターでのシミュレーション結果の表示方法を学べます。
- 経験則だけに頼らずに基板スペースを最適化できるよう、配線、プレーン、ビアの寸法をより適切に判断するうえで、このツールがどのように役立つかを確認できます。
AIでさらに深掘り:

最新のDCパワーインテグリティ解析機能については、AltiumのPower Analyzer by Keysightをご覧ください。

PDN Analyzer powered by CST®(Computer Simulation Technology)はAltium Designerと直接統合され、現在のPCBプロジェクトのPI-DCシミュレーションと解析を実行できます。PDN AnalyzerはAltium Designer内で動作するため、手動でのデータのインポート/エクスポート、データ変換、別のアプリケーションの起動は不要です。回路図エディターまたはPCBエディターからPDN Analyzerを起動し、必要なテストパラメーターを設定してシミュレーションを実行するだけです。結果は主に回路基板の銅箔レイアウトの2D/3Dモデルで表示されるため、すばやく評価でき、PCBレイアウト設計に対して条件を変えながら「もし~なら」を検証することもできます。

Altium DesignerのSpirit LevelサンプルPCBを表示したPDN Analyzerインターフェースと、VCCINT電源のリターン経路となる最上層GNDネットのPI-DC電圧降下シミュレーション結果。
Altium DesignerのSpirit LevelサンプルPCBを表示したPDN Analyzerインターフェースと、VCCINT電源のリターン経路となる最上層GNDネットのPI-DC電圧降下シミュレーション結果。

Limitation – PDN Analyzer powered by CSTは、埋め込み部品(内層に配置された部品)をサポートしていません。詳細については、埋め込み部品を使用したPCBの設計をご覧ください。

PDN Analyzer機能へのアクセス

Altium DesignerでPDN Analyzer機能にアクセスするには、PDN Analyzer ソフトウェア拡張機能をインストールする必要があります。この拡張機能は手動でインストールまたは削除できます。

拡張機能の管理の詳細については、Extending Your Installationのページ(Altium Designer Develop、Altium Designer Agile、Altium Designer)を参照してください。

この機能にアクセスするには、PDN Analyzerの有効なサブスクリプションも必要です。

パワーインテグリティの基礎

本質的に、PI-DC(「IRドロップ」とも呼ばれます)の問題は比較的単純です。基板の電源用銅箔形状(配線、ポリゴン、プレーンなど)に存在する抵抗によって電力が消費され、電圧が低下し、各負荷に供給される電力と電圧が減少します。予想されるとおり、電源に接続される負荷の数が増えるほど、電源とグランドの銅箔経路で相互作用が生じ、IRドロップの問題は複雑になります。

図1:電源およびグランドの銅箔形状と、接続された負荷の基本ブロック図。
図1:電源およびグランドの銅箔形状と、接続された負荷の基本ブロック図。

上の図1は、回路の電源と、各種負荷(メモリ、マイクロコントローラーなど)に電力を供給する電源およびグランドの銅箔形状(配線とプレーン)を示す簡単なブロック図です。 すべての負荷が同じ電源およびグランドの銅箔形状に接続されており、それらを介して動作電圧の供給を受けている点に注意してください。 一般に、こうした電源およびグランドの銅箔形状の抵抗は0Ωと考えがちですが、必ずしもそうとは限らず、この仮定が問題を引き起こすことがあります。 比較的大きな電流が流れることが多いため、電源およびグランドの銅箔形状にわずかな抵抗があるだけでも、大きな電力消費(損失)や電圧降下につながる可能性があります。

図2:「IRドロップ」の影響
図2:「IRドロップ」の影響

図2は、電源およびグランドの銅箔形状の抵抗を適切に考慮しない場合に発生し得る問題の例を示しています。 各銅箔形状の抵抗はわずか0.25Ωと比較的小さいにもかかわらず、負荷での電圧は5Vから4.5Vに低下しています。 設計者はこの電圧降下を把握し、それが許容範囲内であることを確認するか、電圧降下を抑えるように設計を変更して、最終設計が実際の使用環境で不具合を起こさないようにする必要があります。

ただし、この問題は簡単に解決できるように思えます。次の関係式に従って、抵抗を無視できる程度に電源およびグランドの銅箔形状を短くするか、十分に大きくすればよいのです。R = ρ * L/Aここで、各項は次のとおりです。

  • Rは銅箔形状(配線またはプレーン)の総抵抗
  • ρは銅箔形状に使用する材料の抵抗率(通常は銅、ρ ≈ 1.7µΩ-cm)
  • Lは銅箔形状の長さ
  • Aは銅箔形状の断面積(幅x厚さ)

簡単に言えば、電源およびグランドの銅箔形状を短く、厚く、幅広くすれば、抵抗を最小限に抑えられます。

ただし、銅箔形状を大きくしすぎると、貴重な配線スペースを消費し、他の電圧用の銅箔形状に使えるスペースを制限する可能性があります。 電源およびグランドの銅箔形状を適切なサイズにした設計は、むやみに大きなプレーンや配線を使用した設計よりもコンパクトになり、層数も少なくできます。 PI-DC解析の目的は、基板設計の電源およびグランドの銅箔形状が十分なサイズであり、かつ大きすぎないことを設計者が確認できるようにすることです。

IRドロップについて考慮すべきもう1つの点は、消費電力がI2Rであるということです。そのため、抵抗を流れる電流がわずかに増加するだけでも、消費電力は大きく増加します。 電源やグランドの銅箔形状が、そこを流れる電流に対して十分な大きさでない場合、設計した基板が著しく発熱するという熱の問題として現れることがあります。 電源およびグランドの銅箔形状でのIRドロップを非常に小さく抑えることで、これらの銅箔形状での消費電力を最小限にできます。

極端な場合、銅箔形状の抵抗が十分に大きく(非常に細く長い場合)、そこに十分な電流が流れると、その銅箔形状は事実上「ヒューズ」となり、銅箔が溶断して設計した基板が故障します。危険な状況を招く可能性もあります。 PCBの電流容量に関するIPC-2152規格はこの問題を扱っていますが、厳しい条件(例えば、放熱を助ける熱伝導性の銅箔が近くにない状態)を想定しています。また、設計者は温度上昇を最小限しか許容しないなど、最も保守的な前提でこの規格を適用することがよくあります。 PI-DCは熱設計の指針としてIPC-2152規格に代わるものではありませんが、電力供給系の電圧降下と電流密度を調べることで、安全に設計を最適化するための有益な知見を得られます。 電源からすべての負荷までの電流密度と電圧降下を最小限に抑えるよう最適化した設計は、発熱も少なく、熱に関する問題が発生する可能性も低くなります。

PI-DC解析で検討するもう1つの要素は、電力供給に使用するビアの数です。 この問題は、銅箔形状を適切なサイズにする場合とよく似ています。ビアが不足するとIRドロップによって電圧が低下し、電力が無駄に消費されますが、ビアを使いすぎると貴重な配線スペースが無駄になります。 特に、ある電圧の経路にビアを使いすぎると、それらのビアが他の層の銅箔形状を貫通し、その銅箔の断面積を減らすため、他の電圧にも問題を引き起こします。 銅箔形状の寸法を適切に設定する場合と同様に、負荷点での電圧を解析することで、ビアのサイズや数を適切に決定できます。

最後に、最終設計を実際の物理形状どおりにシミュレーションし、最適化されていることを確認するのは非常に有益です。 PI-DCシミュレーションを使えば、例えば設計過程で負荷が削除または追加された場合でも、コネクタやレギュレーターの定格が適切であるかを最終確認できます。

PCB上の各種電源領域、グランド領域、ビアで生じる電圧降下について信頼できるデータがなければ、設計者は安全側に余裕を持たせるため、プレーン領域、配線幅、ビアを必要以上に大きく、または多くせざるを得ません。その結果、貴重な基板スペースが消費され、層数や設計サイズが増大します。  Altium PDN Analyzerは、設計のDC電源分配の適切性に関する正確な情報を、使いやすくわかりやすい形で提供し、設計者が可能な限り効率的な電源分配設計を実現できるようにします。

解析結果は最終的な設計検証に適しているだけでなく、設計の計画段階でも活用でき、電源供給を可能な限り効率的に行う構成をあらかじめ検討できます。  PI-DCは、効率と堅牢性に優れた電源供給ネットワークを実現するうえで非常に有用なツールです。PDN Analyzerを使用すれば、そのシミュレーションと解析のプロセスを、わかりやすく直感的かつ効率的に実行できます。

PDN Analyzerは、PCB設計にこうしたさまざまな利点をもたらすとともに、次のメリットも提供します。

  • 製品の信頼性:定常電圧レベル、電圧の安定性、配線の発熱や損傷の観点から、設計内の各電源が正しく機能するよう支援します。
  • PCBレイアウトの改善:基板スペースを最も有効に活用するための情報を提供し、電流密度が高く問題となる領域を容易に特定して修正できるようにします。
  • 知識:DC電流経路のレイアウトを検討する際、経験則や概算に頼る必要がなくなります。

PDN Analyzerシミュレーション

最も基本的な形では、PI-DC解析の対象となる基板レイアウトは、電源となる電圧レギュレータとその負荷、およびそれらを接続するさまざまな形状の銅箔領域や異なる幅の配線で構成されます。

電源と負荷からなる基本回路の例。
電源と負荷からなる基本回路の例。

各層とビアを介して接続された、さまざまな形状の銅箔領域と配線を含む基本回路のPCBレイアウト。
各層とビアを介して接続された、さまざまな形状の銅箔領域と配線を含む基本回路のPCBレイアウト。

PDN Analyzerパネルのインターフェース(Tools » PDN Analyzer)は、上記の回路や概念ブロック図(図1)と同様に、実際の電源経路とグランド経路を含む、電源から負荷までの回路ネットを視覚的に再現します。アプリケーションは、現在アクティブなPCB設計から、物理的および電気的な情報(ネットリスト、デバイス、各層の形状など)をすべて自動的に抽出し、PI-DCシミュレーションエンジンにデータを提供します。

基本回路と基板レイアウトのPIシミュレーション設定を示すPDN Analyzer パネルのインターフェース。
基本回路と基板レイアウトのPIシミュレーション設定を示すPDN Analyzer パネルのインターフェース。

ここでは、電圧源はU1の出力(ピン3とピン2の間で5V)であり、負荷はRLを流れる指定電流(0.1A)です。インターフェースから初期パラメータ(電源および負荷の電圧・電流など)を入力してシミュレーションを実行すると、解析結果のデータがPCBエディタ上で2Dまたは3Dのレンダリング画像として視覚化されます。

基板のPWRネットとGNDネットの銅箔における電圧降下のシミュレーション結果(U1からRL、およびRLからU1)。基板のPWRネットとGNDネットの銅箔における電圧降下のシミュレーション結果(U1からRL、およびRLからU1)。

PDN AnalyzerのPIシミュレーションでは、対象となるすべての基板層について、電圧(IRドロップ、上図)または電流密度(下図)の結果を表示するように設定できます。

PWRネットとGNDネットの両方の電流密度マップ(U1からRL)。
PWRネットとGNDネットの両方の電流密度マップ(U1からRL)。

► PDN Analyzerの使用方法と結果の解釈に関する詳しい説明については、PDN Analyzerのサンプルガイドを参照してください。

PDN Analyzerのインストールには、PDN解析の設定ファイルのサンプルを複数含む、AltiumのSpiritLevel-SL1 PCBリファレンスプロジェクトが付属しています。PDNAのFile » Explore Samplesメニューオプションからプロジェクトとサンプルにアクセスし、解凍してください。

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